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ボーン・上田賞

2016年度ボーン・上田記念国際記者賞

2016年度の第67回ボーン・上田記念国際記者賞は選考の結果、「受賞該当者なし」となりました。該当者なしは、ボーン国際記者賞時代を含めて11回目で2009年度以来7年ぶりです。 以下は選考会議のコメントです。

 今年は、受賞該当者なしという、まことに残念な結果となりました。選考会議がそうした結論に至った経緯をお伝えしたいと思います。
 世界はいま、激動の時代を迎えています。一時的な変化というより、歴史的ともいえる、われわれが大前提としてきた価値観をも覆すのかと思われるような変化とみられるものも少なくありません。米国におけるトランプ大統領の登場、それに先立つ英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)、EU自体の動揺、フランスをはじめ多くの国における極端な主張の政党や政治家の台頭、中国の台頭ないし再台頭に伴う地政学、地経学的な変化、第4次産業革命と呼ばれるような経済・産業の構造変化、人口知能(AI)などをはじめとする技術のパラダイム転換と、それが及ぼす経済、社会、生活への影響の甚大化、テロや原理主義の横行、難民の劇的な増大、保護主義への傾斜など、まさに潮流変化ともいえる事象が折り重なって進行しだしています。それに伴い、各国の政治だけでなく、国際機関、企業など様々な分野においてガバナンスが問われています。そうした潮流変化のもとで、政治、経済、社会の不確実性が高まりつつあります。
 選考会議が期待したのは、そうした時代的な地殻変動、潮流変化を直視し、洞察する報道活動です。取材・報道活動におけるメディアおよびジャーナリストの努力は評価できます。しかし、歴史的な変化の下に、不確実性、流動性が様々な分野で強まりつつあるなかで、社会からのメディアへの、またジャーナリストへの期待が一層高まっていると実感します。今回応募のあった記事・報道には、そうした期待に応えられるような骨太で深みのあるものが、残念ながら見受けられませんでした。
 また、選考の基準は、応募者の2016年の1年間における報道活動です。長年にわたる活動で立派な業績を残した応募者もいます。しかし、本賞は年功賞ではなく、あくまで過去1年間における報道活動を対象としたものです。それだからこそ、上記の若干の例を挙げたような、2016年における歴史的とも見られる大変化に真正面から挑戦する報道活動と作品が期待されました。たとえば、トランプ現象も、トランプ大統領という特異な性格の大統領が生まれたこと自体よりも、なぜプロの政治家たちが敗北したのか、それをもたらした背景は何か、それが過去とは断絶した新しい動きへの萌芽なのか、大統領候補としてバニー・サンダース氏らが善戦した背景は何か、伝統的なメディアとツイッターなどに現れるネット社会、ネット情報との関係がどうなり、民主主義のガバナンスにどうした影響を持続的に与えうるのか。そうしたことを社会はわれわれに問いかけていると思われます。
 フランスの歴史学者であるエマヌエル・トッド氏など、何人もの学者たちが、こうした時代的な変化に注目し、あたかもジャーナリストのような言論活動をしたことも無視できません。変化と不確実性の時代こそ、ジャーナリストの出番であるはずだと思うからです。
 社会から寄せられる大きな期待に、今後とも挑戦していただくことを心より祈念いたします。

2017年2月23日
ボーン・上田記念国際記者賞選考会議

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