2023.12.01
メディア展望
『メディア展望』12月号発行のお知らせ
編集長の一言二言(12月号)
■イスラム組織ハマスとイスラエルの激しい戦闘が続いています。人質を盾にするハマス、病院を空爆するイスラエル双方の行為が戦争犯罪なのは紛れもない事実ですが、国際社会の懸念の声は届かず、事態は深刻の度を増しています。パレスチナには2000年ほど前、ユダヤ人の王国が存在し、そこは旧約聖書に「神が与えた約束の地」と書かれた土地でしたが、やがてローマ帝国によって王国が滅ぼされるとユダヤ人は、世界各地に離散。しかし、ヨーロッパなどで迫害を受け、再びイスラム教徒が大半のパレスチナ人が住む地に移住し、1948年のイスラエル建国に至ります。その後、数次にわたる中東戦争を経て、今度はパレスチナ人が土地を追われ難民となったり、ガザ地区などに押し込まれ、パレスチナの解放を訴えるアラブ諸国、イスラム組織などとイスラエルが衝突を繰り返してきました。いわば2000年にわたって宗教、民族、歴史問題が複雑に絡み合い、国際社会がいまだに解決できない最大の課題が、パレスチナ問題です。戦闘がどのような形で終結しても、互いの遺恨を払しょくするのは難しく、問題解決の道筋は見えないままです。
■今月号のトップページはシンポジウムで基調講演した椎名誠氏の講演録です。新型コロナに染した経緯、生まれて初めて救急車に乗った経験や病床で思い巡らせたことを率直に語っていただきました。
■今年、メディア業界に深刻な問題を投げ掛けたのはジャニーズ問題でした。「放送時評」の拡大版として上智大学の音好宏氏にジャニーズ問題の真相を書き下ろしてもらいました。「メディアにおける多様性の大切さ」をテーマに特別講演していただいた東大理事・副学長の林香里氏の講演録も掲載しましたが、その中でもジャニーズ問題を巡る日本のメディアの姿勢に警鐘を鳴らしています。この問題は根が深いだけに、メディア関係者にはぜひ読んでほしい内容です。■毎年行っているメディアに関する世論調査結果がまとまりました。今年のトピックとして尋ねた少子化・人口減少には8 割の人が危機感を持っていましたが、国に対し、少子化対策に本腰を入れるよう求める意見は41.6%にとどまったのが目を引く結果となりました。
■海外情報(米国)と日記で読む昭和史は都合により休載します。 (一ノ瀬英喜)