2024.11.01
メディア展望
『メディア展望』11月号発行のお知らせ
編集長の一言二言(11月号)
■世界最古の非営利報道機関として1846年に発足したAP通信社が、経営基盤の強化とともに、自社ニュースの配信先と読者・ユーザー数の拡大を目指して非営利のオンラインメディアパートナー契約を結びました。今月号で元AP通信社北東アジア総支配人の我孫子和夫氏に同社の新たな試みについて解説していただきました。発足当初、加盟新聞社の分担金で運営してきた同社は、収入源の拡大を目指して海外や放送局、映像ニュース分野にも配信してきましたが、インターネットの普及に伴う読者の新聞離れによる「新聞不況」が、同社の経営基盤を揺るがす事態となっていました。新聞通信調査会が今年夏に行った世論調査で新聞の購読率は前回調査から4・3㌽減の53・8%まで落ち込み日本でも新聞離れが顕著です。AP通信の取り組みは日本のメディアにとっても参考になると思います。
■11月5日の米大統領選に向けて、トランプ前大統領とカマラ・ハリス副大統領が大接戦を演じ、世界各国が固唾をのんで見守っています。音好宏上智大学教授の「放送時評」は、米大統領選、自民党総裁選や総選挙を巡るメディアの報道ぶりについて取り上げています。日本の放送局は公職選挙法の規定や放送法4条の「政治的公平性の縛りから、神経を使った報道ぶりが目立ちます。一方で、各党や候補者がSNSなどを積極的に活用し、選挙運動自体が大きく様変わりし、メディア環境の変化に報道機関がどのように向き合うべきかが問われています。一方、米大統領選では各メディアが支持候補を鮮明にし、大富豪イーロン・マスク氏が、激戦州のペンシルベニアで投票日まで毎日1人の登録有権者に100万ドル(約1億5000万円)を贈ると表明して物議を醸しています。日本ならばメディアの対応は法律違反で、マスク氏に至っては、自分の会社への利益誘導が背景にあっての発言だとすれば、信じられない行為で、実際、米国内では金銭提供は「明らかに法律違反だ」との指摘も出ています。お国柄の違いと言えば、そうなんでしょうが……。(一ノ瀬英喜)