2024.09.01

メディア展望

『メディア展望』9月号発行のお知らせ

編集長の一言二言(9月号)

■ロシアがウクライナに軍事侵攻して 2 年半が経過しました。東部戦線ではロシア軍が徐々に占領地を広げる一方、ウクライナ軍がロシアのクルスク州に侵攻し、1000平方㌔という広大なロシア国土を制圧しました。ロシアの国土が他国の正規軍に制圧されるという予想外の電撃作戦の展開は、ロシアのプーチン大統領の政権基盤を揺るがし、膠着状態にあった戦況の軍事、政治的な転換点になるか注目されています。こうした中で、プーチン大統領は今年 6 月、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談で「包括的戦略パートナーシップ条約」に調印し、蜜月ぶりをアピールしました。ロ朝の急接近で、北東アジア情勢も一気に不安定化しかねない状況です。今月号のトップページでは、共同通信の松島芳彦編集委員にウクライナから朝鮮半島までのユーラシアを貫く危機の真相を解説してもらいました。ロシアや北朝鮮の本音と建前や中国のジレンマなど興味深い分析記事となっています。

■ 8 月11日に閉幕したパリ五輪で日本選手団は金メダル20個を含む45個のメダルを獲得し、ともに海外開催の五輪では過去最多となりました。パリ五輪の開会式ではマリー・アントワネットの首が登場するなど物議を醸したほか、フランス有利と論議を呼んだ不可解な判定、選手村の食事問題やセーヌ川の汚染など大会運営を巡る問題点も数多く指摘されました。一番の問題は、スポーツの国際大会でこれまでも何度か問題となった性別を巡る適正資格問題が再燃したことです。女子ボクシングで過去の世界選手権ではジェンダー適正検査で「不合格」になった 2 人の選手がパリ五輪では「問題なし」として、それぞれ金メダルを獲得したからです。同じ選手がなぜ大会によって参加資格を巡り別々の判断が下されたのか。五輪に参加するため、汗水流す選手にとっては死活問題である一方、人間の尊厳にも関わる難しい問題です。小林恭子氏の海外情報(欧州)では、性別を巡る参加資格の問題点を分かりやすく解説しています。

■ 9 月号には杉浦信之中央大学客員教授の連載「メディアの日本語」の 2 回目を掲載しました。今回取り上げた表現は、記事の文末に「~形だ」を加える用法です。現役時代に何気なく使っていた表現が、実は本来の用例から遠ざかり、無意識のうちに記者の「書き癖」と化していると指摘しています。杉浦氏の連載は、記者が使う紋切り型の表現について、さまざまな視点から分析を加えていて「なるほどそういうことだったのか」と、いまさらながら納得させられる話が盛りだくさんです。(一ノ瀬英喜)