2019.10.01

メディア展望

『メディア展望』10月号発行のお知らせ

編集長の一言二言

▽酷暑が去り秋の深まりとともに早や10月号となりました。今月号は、種々多様な原稿が集まり、予想以上に読み応えのある号になったのではないかと自負しています。

 巻頭には、元日経新聞記者で産業分野を専門とする大西康之氏に世界の自動車産業について書いてもらいました。大西氏によると、2019年は「電気自動車EV元年」と記憶されるかもしれない、ということで世界の自動車メーカーはEVに集中投資している一方、日本メーカーの立ち遅れが目立っているようです。このEVという巨大な波に乗れなければ、日本の自動車産業は電機産業と同じ道をたどりかねないという指摘には暗たんとした気持ちになりました。

▽阪堂博之氏が執筆した「メディアから見た日韓関係―対立の出口はあるか」は、日韓関係が戦後最悪と言われる中でタイムリーな原稿。メディア、とりわけテレビのワイドショーなどは、日韓の対立をあおるような取り上げ方をしているように見受けられます。しかし阪堂氏が実際にソウルに行ってみると、激しい反日デモがあちこちで展開されているわけでもなく、コンビニでも日本製品が売られているなど、拍子抜けしたそうです。庶民レベルでは日韓が対立する必要などないでしょう。作家・数学者の藤原正彦氏は某月刊誌に寄稿した中で、韓国人が「惻隠(そくいん)の情」を持っているとして、「そこにこそ希望がある」と指摘しています。第2次大戦末に満州からの逃避行で朝鮮半島を南下した同氏家族ですが、母上(故・藤原てい氏)は、「朝鮮の金持ちは冷たかったけど、貧しい人たちは皆とても親切だった。“涙”を知っている人々だった」と語った由です。(倉沢章夫(としお)