2024.10.01
メディア展望
『メディア展望』10月号発行のお知らせ
編集長の一言二言(10月号)
■新型コロナ禍で2021年の訪日外国人は25万人まで減少していましたが、コロナ禍が事実上収束し、最近の円安傾向が追い風となって24年は3500万人を超える勢いです。「インバウンド消費」も年間 8 兆円に達する見込みで日本経済にとっても大きな起爆剤になっています。その裏で「インスタ映え」するスポットに客が集中し、近隣住民とのトラブルを招くなどオーバーツーリズムが各地で問題となり、スペインなどでは外国人観光客の排斥運動も起きています。各自治体では、外国人向けに「二重価格」の導入を検討したり、「宿泊税」を徴収する動きも広がっています。今月号のトップページでは共同通信の森一徳くらし報道部長にインバウンドの光と影について、さまざまな視点から解説してもらいました。
■日本人選手のメダルラッシュに沸いたパリ五輪2024とパラリンピックが閉幕しました。今月号では共同通信運動部の田村崇仁次長にパリ五輪を総括してもらいました。パリ五輪では大会運営を巡り数多くの問題点が指摘されましたが、ウクライナやガザでの戦闘が続く中での開催でスポーツを通じた国際平和への貢献を掲げる五輪の理念は大きく揺らぎました。一方で、競技を伝える新聞やテレビ報道では多様化するプラットフォームを利用したデジタル化の加速が顕著となり、パリ五輪は既存のメディアにとっても新たな時代に向けた「分岐点」と言える大会でした。パリ五輪ではデジタル化時代を反映した取り組みが進み、デジタル動画配信サービスで視聴する人が急増。メダリスト会見をユーチューブで生中継したり、国内ではインターネットの民放公式配信サービス「TVer(ティーバー)」の利用者が飛躍的に増大しました。デジタル化の波はSNS 上で数多くの誹謗中傷の投稿が確認され、負の側面も浮き彫りになりました。今後の五輪報道にどう取り組むべきか。既存のメディアにとっても大いに参考となる話が盛りだくさんです。
■ロシアで生まれた通信アプリ「テレグラム」の創業者がフランス当局に逮捕されました。犯罪のツールになっているのに運営者として監視・監督を怠った疑いがあるとのことです。テレグラムは秘匿性が高いため、国民を厳しい監視下に起きている専制国家の人々にとっては検閲をかいくぐって政権批判ができる手段として重宝されています。ただ、詐欺グループが連絡手段に使ったり、さまざまな犯罪に使われていることも事実です。違法コンテンツの監視・監督の責任をプラットフォームの経営者に求める動きが定着していくのか。小林恭子氏の海外情報(欧州)では、こうした動きを分かりやすく解説しています。 (一ノ瀬英喜)