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2021.07.01

デジタルアーカイブ

『証言 通信社史』をデジタルアーカイブで公開
 同盟通信など戦前の通信社役職員らによる証言集

公益財団法人新聞通信調査会は、2021年6月に出版した『証言 通信社史』(非売品)を7月1日、同調査会のデジタルアーカイブ第4弾として公開しました。同書は1945年に解散した同盟通信とその前身の新聞聯合や同盟通信に合流した日本電報通信社(現在の電通)の通信社部門、国際通信、満州国通信、東方通信などに従事した役職員の手記、座談会記録などをまとめた証言集で、書籍版はB5判、860ページの大型本です。東京都内の主要な公共図書館、全国の道府県立図書館、大学図書館、報道機関に寄贈しました。お近くの図書館にない場合などでもデジタルアーカイブ化により、いつでも、どこでも事前登録なしで自由に閲覧できるようになりました。(デジタルアーカイブへはこちらから)

新聞通信調査会の前身の財団法人「通信社史刊行会」は1958年、日本の通信社の歴史を詳細に記述した『通信社史』を刊行しました。『通信社史』の刊行は同盟通信が残した資産で設立された財団の主目的でした。『通信社史』刊行後、名称変更した新聞通信調査会はあらためて同盟通信、新聞聯合の元役職員の手記を集めたり、座談会を開催したりして『通信社史』の『続編』を刊行しようと試みましたが、結局、刊行には至りませんでした。

新聞通信調査会に残された座談会の速記録、手記原稿などを編集し、「メディア展望」の前身の「新聞通信調査会報」に掲載された手記や、いくつかの同盟通信OB会の会報誌などからも手記を何点か選び、時系列でまとめたのが本書です。『通信社史』が通信社の「正史」とすると、現場の肉声を盛り込んだ「裏面史」とも言えます。

通信社が世の中に知られていなかったころの取材の苦労話、太平洋戦争直前の緊迫した欧米各支局の様子、中国大陸や東南アジアでの従軍取材の実態など一線の記者らが明かす秘話、裏話は興味深く、敗戦後の海外での収容所生活を綴った引き揚げ記は悲壮感があふれています。解散を決めた同盟通信の最後の理事会、社員総会速記録など重要な資料も盛り込みました。メディア関係者、研究者ばかりか現代史愛好家にとっても必見の書です。


◎『証言 通信社史』の構成と特長

▽本文は時代順、北から南への地域順を基本に8章に分け、それぞれの冒頭に章全体を俯瞰する「概要」を置いた。また読者の理解を深めるため編集委員が書き下ろした「解説」5本を配した。文中に出てくる出来事、一般にはなじみのない業界用語などには番号を振り、第8章の後に276項目の「編集者注」としてまとめた。

▽収録記事数は①座談会20本②手記・聞き取りなど308本③議事録・社長訓示5本。

▽本文部の後には手記の筆者、座談会出席者を中心とするメディア関係者318人と軍人、政治家ら104人の略歴を「人物紹介」として掲載した。

▽8章の構成は以下の通り。

第1章 国際と東方の時代

第1節 国際通信社

<解説>岩永裕吉論~「報道の独立」と「国家意識」

第2節 東方通信社

第2章 聯合の時代

第1節 国内ニュース配信

第2節 写真スクープ

<解説>報道写真の系譜

第3節 大陸に展開

第4節 電通、聯合が一体に

第3章 満州国通信社

第1節 国策遂行機関

第2節 「国通」の終焉

第4章 同盟発足と日中戦争

第1節 二・二六事件

第2節 日中戦争

第3節 大同結盟

第4節 中国の総支社局

第5節 欧米圏の取材網

第5章 太平洋戦争下の同盟

第1節 開戦の火ぶた

第2節 国内での活動

<解説>記者と兵士のはざまで~「報道班員」の実像

第3節 海外の同盟記者

<解説>「昭南新聞会」~軍と協力、同盟が新聞を発行

第6章 敗戦前後と引き揚げ

第1節 同盟本社で

第2節 大陸撤退へ

第3節 戦争末期の南方

第4節 原爆投下

第5節 ポツダム宣言受諾

第6節 苦難の引き揚げ

第7章 通信社の技術

第1節 無線

第2節 電送技術

第8章 同盟解散

第1節 自主解散への道

第2節 悲壮な決意

<解説>「思想戦」を掲げた古野伊之助氏の素顔